2020年12月4日14時30分(中央ヨーロッパ時間)、ノルウェーのシーボットンで撮影された、おうし座北流星群の火球
2020年12月4日14時30分(中央ヨーロッパ時間)、ノルウェーのシーボットンで撮影された、おうし座北流星群の火球
出典:Norsk meteornettverk/Universitetet i Tromsø/Ketil Vegum
流星と昴の日本神話

速の章

神名にハヤが付く流星の神々。このハヤは流星の速さを形容したもの。

 

「神名に付くハヤは美称・称辞(たたえごと)」ではない

神名に付く「ハヤ」は美称・称辞(たたえごと)(ほめたたえる言葉)と解釈されていることが多い。

例えば、坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋(おおのすすむ)校注『日本古典文学大系67 日本書紀 上』(岩波書店、一九六七年)は、速秋津日命の注釈で「ハヤは称辞」、速玉之男の注釈で「ハヤは美称」としている。

しかしこれは美称・称辞(たたえごと)と解釈しておけば、どの神の名に付いても大抵当てはまっているように見えるというだけの事であり、この解釈を積極的に支持する根拠は乏しい。占い師が誰にでも当てはまるような事を言って占いが的中したように見せかけているのと同様である。

 

神名に付くハヤの意味

神名に付く「ハヤ」については、流星の速さを形容したものである場合が多いと考えている。

この章ではこの考えを裏付ける根拠として、神名に「ハヤ」が付く神々の多くが流星の神と考えられる神話を持つことを示してゆく。『古事記』『日本書紀』『古語拾遺(こごしゅうい)』『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』に登場する、神名に「ハヤ」が付く神については全て挙げている。

流星以外にも速いものはあるので「ハヤ」が付く全ての神が流星の神とは限らないが、多くの場合においては流星の神と解釈できる。