流星と昴の日本神話
石の章

その他の神

 

石土毘古神(イワツチビコ)

石巣比売神(イワスヒメ)

 

『古事記』において伊邪那岐(イザナキ)命・伊邪那美(イザナミ)命の子として登場する神だが、系譜以外の記述がないため流星の神であるかは不明である。

 

 

磐土命(イワツチ)

 

【櫛の章/補足 ユウツヅの意味】で前述したように表筒男(ウワツツノオ)命の別名である。

『日本書紀』神代上第五段一書第六では、伊奘諾(イザナキ)尊が黄泉(よもつくに)(けが)れを海で清めた際に底筒男(ソコツツノオ)命・中筒男(ナカツツノオ)命・表筒男(ウワツツノオ)命などの神が生まれているが、同段一書第十では同様に海で清めた際に底土(ソコツチ)命・赤土(アカツチ)命・磐土(イワツチ)命などの神が生まれている。

おそらく元は(海の)底・中・上の神を意味するソコツチ・ナカツチ・ウワツチといった神名だったものが、「チ」が【櫛の章/櫛真智命】で前述したようにウ段に変化して「ツ」となったのが底筒男(ソコツツノオ)命・中筒男(ナカツツノオ)命・表筒男(ウワツツノオ)命であり、神名末尾のツチを「土」の意とみなして土関連の神名に変化したのが底土(ソコツチ)命・赤土(アカツチ)命・磐土(イワツチ)命と考えられる。

つまり磐土(イワツチ)命の「イワ」は「ウワ」の変化であり、「星」を意味するものではないと考えられる。

 

 

磐長姫(イワナガヒメ)

 

火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊は大山祇(オオヤマツミ)神の娘である磐長姫(イワナガヒメ)木花之開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)の姉妹のうち、姉の磐長姫(イワナガヒメ)は醜いからと妻にせず、美しい妹の木花之開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)だけを妻としたので、生まれた子孫たちは短命となったとされる。

これに似た神話は世界各地に見られる。例えば神から貰うものとして石ではなくバナナを選んだため人は短命になった、といったような神話である。社会人類学者のJ・G・フレイザーは、このようなタイプの死の起源神話を「バナナ型」と分類した(The Belief in Immortality and the Worship of the Dead, vol. 1, 1913)。

つまり磐長姫(イワナガヒメ)の「磐」はバナナ型神話における長命の象徴であり、「星」を意味するものではないと考えられる。

 

 

長道磐神(ナガチ

 

長道磐(ナガチハ)神は『日本書紀』における名で、『古事記』では道之長乳歯(ミチノナガチハ)神と言う。

黄泉(よもつくに)から帰った伊奘諾(イザナキ)尊が身に付けていた様々な物(杖、帯、衣など)を投げたところ、それらの物から神が生まれる。長道磐(ナガチハ)神はこの時に帯から生まれたとされるが、それ以外の記述がないため流星の神であるかは不明である。

 

まとめ

・その他の神

・石土毘古神(イワツチビコ)

・石巣比売神(イワスヒメ)

・系譜以外の記述がないため流星の神であるかは不明。

・磐土命(イワツチ)

磐土(イワツチ)命の「イワ」は表筒男(ウワツツノオ)命の「ウワ」の変化であり「星」ではない。

・磐長姫(イワナガヒメ)

磐長姫(イワナガヒメ)の「磐」はバナナ型神話における長命の象徴であり「星」ではない。

・長道磐神(ナガチ

・この神に関する神話上の記述が乏しいため流星の神であるかは不明。