流星と昴の日本神話
火の章

火雷命

大物主(オオモノヌシ)神と同じく丹塗矢(にぬりや)神話を持つ雷神。大物主(オオモノヌシ)神と同じく雷鳴のような衝撃音を発する火球の神。

 

丹塗矢(にぬりや)神話を持つ雷神

火雷(ホノイカヅチ)命(ノイカヅチ)は【玉の章/玉依日子、玉依日売】で前述したように『山城国風土記(やましろのくにふどき)逸文(いつぶん)に登場する神である。

火雷(ホノイカヅチ)命は丹塗矢(にぬりや)と化して川を流れてきて、その矢を拾い寝床のそばに置いた玉依日売(タマヨリヒメ)賀茂建角身(カモタケツノミ)命の娘)に子(可茂別雷(カモワケイカヅチ)命)を生ませたとされる。

 

(書き下し文)

玉依日売、石川の瀬見の小川に川遊(かはあそび)したまひし時、丹塗矢(にぬりや)、川上ゆ流れ下りき。(すなは)ち取りて床辺(とこのべ)()()き、(つひ)(はら)みて男子(をのこご)()れませり。人と()りて、外祖父(おほぢ)建の角身の命、八尋屋(やひろや)を造り、八戸(やと)(とびら)()て、八腹(やはら)(みき)()みて、神集(かむつど)(つど)へて七日七夜楽遊(うたげ)したまひて、さて子と語らひて言ひたまはく「(いまし)の父と思はむ人にこの(みき)を飲ましめよ」といふ。(すなは)ち、酒坏(さかづき)(ささ)げて(あめ)に向きて祭らむとして、()(いらか)()穿(うか)ち天に(のぼ)りたまひき。(すなは)ち外祖父の(みな)()りて、可茂(かも)別雷(わけいかづち)(みこと)(なづ)く。(いは)ゆる丹塗矢は乙訓(おとくに)(こほり)の社に(いま)せる()(いかづち)(みこと)なり。

(現代語訳)

この玉依日売が石川の瀬見の小川で川遊びなさっていた時に、丹塗矢(にぬりや)(真っ赤に塗られた矢)が川の上流から流れ下ってきた。そこで玉依日売はその寝床に挿し置いたところ、とうとう身ごもって男子をお生みになられた。その子が成人した時、外祖父の建の角身の命は、大きな建物を造り、その全ての扉を閉じ、数多くの酒を(かも)し、神々を招待して、七日七夜の宴を張った。そこで建の角身の命は孫に「一座の神々の中でお前の父と思われる人にこの神酒(みき)を飲ませなさい」と言った。そこで孫は酒杯を上げてまず天に向かって祈ろうとして、屋根を割り抜いて昇天なさった。こういうわけで、外祖父の名に(ちな)んでこの孫を可茂(かも)別雷(わけいかずち)(みこと)と名付けている。丹塗矢と称したのは、乙訓(おとくに)(こおり)(やしろ)で祭られている()(いかずち)(みこと)のことである。

《出典》植垣節也校注/訳『新編日本古典文学全集5 風土記』(小学館、一九九七年、四三八~四三九頁)

 

また、記紀においては、伊奘諾(イザナキ)尊が黄泉(よもつくに)伊奘冉(イザナミ)尊の姿を見た時に伊奘冉(イザナミ)尊の頭・胸・腹・(ほと)・手・足などの各所にいた八柱の雷神のうちの一柱であり、伊奘冉(イザナミ)尊の胸にいた雷神である。

 

火雷(ホノイカヅチ)命と大物主(オオモノヌシ)

大物主(オオモノヌシ)神もまた【櫛の章/倭大物主櫛𤭖玉命】で前述したように同様の丹塗矢(にぬりや)神話を持ち、雷鳴を発する神である。

つまり、火雷(ホノイカヅチ)命は大物主(オオモノヌシ)神と同種の神であり、大物主(オオモノヌシ)神と同じく雷鳴のような衝撃音を発する火球(特に明るい流星)の神と考えられる。

 

各文献における名前

『古事記』……火雷(ホノイカヅチ)

『日本書紀』……火雷(ホノイカヅチ)

山城国風土記(やましろのくにふどき)逸文(いつぶん)……火雷(ホノイカヅチ)

先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』……火雷(ホノイカヅチ)

 

神名解釈

神名の火雷(ホノイカヅチ)命(ホノイカヅチ)を解釈すると、「()」は本章冒頭で述べたように「星」を「()」に見立てたものと考えられるので、「星の雷の神」と解釈できる。「星の雷」とはつまり雷鳴のような衝撃音を発する星である火球のことと考えられる。

 

まとめ

火雷命(ノイカヅチ)……流星の神

【櫛の章/倭大物主櫛𤭖玉命】で前述した流星の神・大物主(オオモノヌシ)神と同じく丹塗矢(にぬりや)神話を持つ雷神。つまり大物主(オオモノヌシ)神と同じく雷鳴のような衝撃音を発する火球の神。