流星と昴の日本神話
玉の章

玉依日子

玉依日売

日向(ひむか)()(たけ)に天降った賀茂建角身(カモタケツノミ)命の子。玉依日売(タマヨリヒメ)は流星の神・火雷(ホノイカヅチ)の妻。

 

賀茂建角身(カモタケツノミ)命の子

玉依日子(タマヨリヒコ)タマヨリヒコ)、玉依日売(タマヨリヒメ)タマヨリヒメ)は『山城国風土記(やましろのくにふどき)逸文(いつぶん)に登場する兄妹の神であり、賀茂建角身(カモタケツノミ)命の子とされる。

兄の玉依日子(タマヨリヒコ)賀茂県主(かものあがたぬし)らの遠祖(とおつおや)とされている。妹の玉依日売(タマヨリヒメ)丹塗矢(にぬりや)と化して川を流れてきた火雷(ホノイカヅチ)命の子、可茂別雷(カモワケイカヅチ)命を生む。

山城国一宮(やましろのくにいちのみや)とされる賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)上賀茂神社(かみがもじんじゃ)、京都府京都市北区上賀茂本山(きょうとしきたくかみがももとやま)339)では、この可茂別雷(カモワケイカヅチ)命が(まつ)られている。

また、同じく山城国一宮(やましろのくにいちのみや)とされる賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)下鴨神社(しもがもじんじゃ)、京都府京都市左京区下鴨泉川町(きょうとしさきょうくしもがもいずみがわちょう)59)では賀茂建角身(カモタケツノミ)命と玉依日売(タマヨリヒメ)(まつ)られている。

 

賀茂建角身(カモタケツノミ)

賀茂建角身(カモタケツノミ)命は『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)山城国(やましろのくに)神別 天神 鴨県主(かものあがたぬし)の条によれば神魂(カミムスヒ)命の孫とされ、神武天皇が山中で道を見失った際に八咫烏(ヤタガラス)に化身して道案内をしたとされる。『山城国風土記(やましろのくにふどき)逸文(いつぶん)においては日向(ひむか)()(たけ)に天降ったとされている。

天降る神であるという点から、流星に由来する神である可能性がある。

序文で述べた流星の神・火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊も、日向襲之高千穂峯(ひむかのそのたかちほのたけ)(『日本書紀』神代下第九段本文)、日向襲之高千穂槵日二上峯(ひむかのそのたかちほのくしひのふたがみのたけ)(同段一書第四)、日向襲之高千穂添山峯(ひむかのそのたかちほのそほりのやまのたけ)(同段一書第六)などに天降ったとされている。

 

火雷(ホノイカヅチ)

また、【火の章/火雷】で後述するように玉依日売(タマヨリヒメ)の夫の火雷(ホノイカヅチ)命についても、雷鳴のような衝撃音を発する火球の神と考えられる。

 

各文献における名前

・『山城国風土記(やましろのくにふどき)逸文(いつぶん)……玉依日子(タマヨリヒコ)玉依日売(タマヨリヒメ)

・『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』……鴨建玉依彦(カモタケタマヨリヒコ)

 

神名解釈

玉依日子(タマヨリヒコ)玉依日売(タマヨリヒメ)本章冒頭で述べた「タマ」が付く流星の神の名を持つのは、天降る神(流星の神の可能性がある)・賀茂建角身(カモタケツノミ)命の子であることに由来すると考えられる。

神名の玉依日子(タマヨリヒコ)(タマヨリヒコ)、玉依日売(タマヨリヒメ)(タマヨリヒメ)を解釈すると、「タマ」は本章冒頭で述べたように「星」を「玉」に見立てたもの、「ヒコ」は男神の神名末尾のパターン、「ヒメ」は女神の神名末尾のパターンと考えられるので、それぞれ「星に()()く男神」「星に()()く女神」と解釈できる。

 

まとめ

・玉依日子(タマヨリヒコ)……天降る神の子

・玉依日売(タマヨリヒメ)……天降る神の子、流星の神の妻

賀茂建角身(カモタケツノミ)命の子。

賀茂建角身(カモタケツノミ)命は日向(ひむか)()(たけ)に天降る神。

序文で述べた流星の神・火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊も日向(ひむか)()(たけ)に天降る神。

玉依日売(タマヨリヒメ)【火の章/火雷】で後述する流星の神・火雷(ホノイカヅチ)命の妻。

 

関連ページ

【玉の章/玉依姫命】……高皇産霊(タカミムスヒ)尊の孫とされる玉依姫(タマヨリヒメ)命。

【玉の章/その他の神】……海神(ワタツミ)豊玉彦(トヨタマヒコ)の娘である玉依姫(タマヨリヒメ)