朝日山(1)遺跡 ヒスイ製玉類
朝日山(1)遺跡 ヒスイ製玉類
出典:JOMON ARCHIVES(青森県埋蔵文化財調査センター所蔵、田中義道撮影)
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流星と昴の日本神話

玉の章

神名に(タマ)が付く流星の神々。この(タマ)は「五百箇御統(いおつのみすまる)(すばる)」と同様に星を玉に見立てたもの。

 

「神名に付く(タマ)(たま)の意」ではない

神名に付く「(タマ)」については「(たま)」の意と解釈されることがある。

例えば、小島憲之・直木孝次郎・西宮一民・蔵中進・毛利正守校注/訳『新編日本古典文学全集2 日本書紀1』(小学館、一九九四年)は、太玉命の注釈で「立派な霊魂の神。宗教上の司祭者的職能に基づく名」、玉依姫命の注釈で「霊魂(タマ)が依り来る姫、の意」としている。

しかしこれは「(たま)」の意と解釈しておけば、どの神の名に付いても大抵当てはまっているように見えるというだけの事であり、この解釈を積極的に支持する根拠は乏しい。

この点、神名に付く「ハヤ」を美称・称辞(たたえごと)とする解釈(【速の章】で前述)や、神名に付く「クシ」を「()し」の意とする解釈(【櫛の章】で前述)、神名に付く「ミカ」を「ミイカ」の約とする解釈(【甕の章】で前述)と同様の解釈である。

ただし「(タマ)」と表記されている場合は、そのまま「(たま)」の意である場合もあると思われる。また、「ミタマ」や「クニタマ」と付いている場合は「御魂(みたま)」や「国魂(くにたま)」の意と考えられる。

 

神名に付く(タマ)の意味

【速の章/補足 天照大神と素戔嗚尊の誓約の意味】において、五百箇御統(いおつのみすまる)とは「星」が密集している(すばる)を「玉」が連なった装飾品に見立てたものと考えられることを前述した。

神名に付く「(タマ)」についても、「五百箇御統(いおつのみすまる)(すばる)」と同様に「星」を「玉」に見立てたものである場合が多いと考えている。

この章ではこの考えを裏付ける根拠として、神名に「(タマ)」が付く神々の多くが流星の神と考えられる神話を持つことを示してゆく。『古事記』『日本書紀』『古語拾遺(こごしゅうい)』『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』に登場する、神名に「(タマ)」が付く神については全て挙げている。

(タマ)」と表記されていても「星」を「玉」に見立てた神名と考えられる神については挙げている。また、「ミタマ」や「クニタマ」と付く神については、「御魂(みたま)」や「国魂(くにたま)」の意と考えられるので除外している。