流星と昴の日本神話
玉の章

その他の神

 

大国玉神(オオクニタマ

顕国玉(ウツシクニタマ

天国玉(アマツクニタマ

稚国玉(ワカクニタマ

倭大国魂(ヤマトノオオクニタマ

 

大国玉(オオクニタマ)神、顕国玉(ウツシクニタマ)は『日本書紀』神代上第八段一書第六によれば大国主(オオクニヌシ)神の別名とされている。

天国玉(アマツクニタマ)【甕の章/天御梶日女命】で前述した天稚彦(アメワカヒコ)の親である。

稚国玉(ワカクニタマ)顕国玉(ウツシクニタマ)大国主(オオクニヌシ)神)の娘で天稚彦(アメワカヒコ)の妻となった下照媛(シタテルヒメ)の別名とされる。

倭大国魂(ヤマトノオオクニタマ)は別名、倭大神(ヤマトノオオカミ)とも言い、『日本書紀』の崇神(すじん)天皇や垂仁(すいにん)天皇の段に登場する神で、天照(アマテラス)大神と共に宮中に(まつ)られていたとされる。

これらの「〜クニタマ」という神名の「タマ」については「星」の意ではなく、神名末尾のパターンの一種であり、神名末尾のパターン「ミタマ」と同様に「(たま)」の意と考えられる。

具体的には、大国主(オオクニヌシ)神(オオクニヌシ)の別名の大国玉(オオクニタマ)神(オオクニタマ)は、神名末尾のパターン「ヌシ」が「タマ」に置き換わったものと言える。神名末尾のパターンの部分が違う別名の例は多くあり(付録参照)、その一例と考えられる。

また、顕国玉(ウツシクニタマ)天国玉(アマツクニタマ)稚国玉(ワカクニタマ)倭大国魂(ヤマトノオオクニタマ)は、いずれも『日本書紀』において「神」「命」などの神名末尾のパターンを付けずに記述されている箇所があり、これらの神名においても「タマ」は神名末尾のパターンとして使われていると考えられる。

 

 

前玉比売(サキタマヒメ)

活玉前玉比売神(イクタマサキタマヒメ)

 

【甕の章/その他の神】で前述したように前玉比売(サキタマヒメ)速甕之多気佐波夜遅奴美(ハヤミカノタケサハヤヂヌミ)神の妻であり、天之甕主(アマノミカヌシ)神の娘であり、甕主日子(ミカヌシヒコ)神の母である。活玉前玉比売(イクタマサキタマヒメ)神は甕主日子(ミカヌシヒコ)神の子の多比理岐志麻流美(タヒリキシマルミ)神の妻である。

いずれも『古事記』において大国主(オオクニヌシ)神の子孫の系譜に出てくる神だが、系譜以外の記述がないため流星の神であるかは不明である。ただし「速」「甕」「玉」がいずれも系譜上に現れていることから、流星の神である可能性は高いと言える。

各神名を解釈すると、「タマ」は本章冒頭で述べたように「星」を「玉」に見立てたもの、「ヒメ」は女神の神名末尾のパターンと考えられるので、次のように解釈できる。

 

前玉比売(サキタマヒメ)(サキタマヒメ)は「()いた星の女神」

活玉前玉比売(イクタマサキタマヒメ)神(イクタマサキタマヒメ)は「生きている星、()いた星の女神」

 

【玉の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述したように「()いた星=流星」と考えられる。また、【玉の章/活玉命】で前述したように「生きている星」も、自ら天を飛んでいるように見える流星のことと考えられる。

 

 

豊玉彦(トヨタマヒコ)

豊玉姫(トヨタマヒメ)

玉依姫(タマヨリヒメ)

振魂命(フルタマ

 

豊玉彦(トヨタマヒコ)海神(ワタツミ)である。「ワタツミ」とは「ワタ」は古語で「海」の意、「ツ」は古語で「〜の」を意味する助詞、「ミ」は神名末尾のパターンなので「海の神」を意味し、綿津見、綿積、和多罪、海童、少童とも書く。

豊玉姫(トヨタマヒメ)玉依姫(タマヨリヒメ)は『日本書紀』神代下第十段によれば豊玉彦(トヨタマヒコ)の娘である。豊玉姫(トヨタマヒメ)彦火火出見(ヒコホホデミ)尊の妻で彦波瀲武鸕鷀草葺不合(ヒコナギサタケウガヤフキアエズ)尊の母、神武(じんむ)天皇の祖母とされる。玉依姫(タマヨリヒメ)彦波瀲武鸕鷀草葺不合(ヒコナギサタケウガヤフキアエズ)尊の妻で神武(じんむ)天皇の母とされる。

振魂(フルタマ)命は【玉の章/前玉命】で前述した前玉(サキタマ)命の親である。また、『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』右京神別(しんべつ)下 地祇(ちぎ) 八木造(やぎのみやつこ)の条に「和多罪豊玉彦(ワタツミトヨタマヒコ)命の児、布留多摩(フルタマ)乃命の後なり」と記されており、振魂(フルタマ)命も豊玉彦(トヨタマヒコ)の子ということになる。

つまりこれらの神は海神(ワタツミ)の家族だが、神名に「タマ」が付き、振魂(フルタマ)命は天降る神・前玉(サキタマ)命の親でもある。このため海に天降って海神(ワタツミ)となった流星の神々である可能性もあると考えている。

各神名を解釈すると、「タマ」は本章冒頭で述べたように「星」を「玉」に見立てたもの、「ヒコ」は男神の神名末尾のパターン、「ヒメ」は女神の神名末尾のパターンと考えられるので、次のように解釈できる。

 

豊玉彦(トヨタマヒコ)(トヨタマヒコ)は「豊かな星の男神」

豊玉姫(トヨタマヒメ)(トヨタマヒメ)は「豊かな星の女神」

玉依姫(タマヨリヒメ)(タマヨリヒメ)は「星に()()く女神」

振魂(フルタマ)命(フルタマ)は「降る星の神」

 

まとめ

・その他の神

・大国玉神(オオクニタマ

・顕国玉(ウツシクニタマ

・天国玉(アマツクニタマ

・稚国玉(ワカクニタマ

・倭大国魂(ヤマトノオオクニタマ

・これら「〜クニタマ」の「タマ」は「ミタマ」と同様に「(たま)」の意。

・前玉比売(サキタマヒメ)

・活玉前玉比売神(イクタマサキタマヒメ)

・系譜以外の記述がないため流星の神であるかは不明。

・「速」「甕」「玉」がいずれも系譜上に現れており可能性は高い。

・豊玉彦(トヨタマヒコ)

・豊玉姫(トヨタマヒメ)

・玉依姫(タマヨリヒメ)

・振魂命(フルタマ

海神(ワタツミ)の家族だが、神名に「タマ」が付き、振魂(フルタマ)命は天降る神・前玉(サキタマ)命の親。

・このため海に天降って海神(ワタツミ)となった流星の神々である可能性もある。