流星と昴の日本神話
玉の章

倭大物主櫛みか玉命

大物主(オオモノヌシ)神の別名。海を照らしながら来る姿、目を輝かせる蛇の姿を持ち、雷鳴を発する火球の神。

 

倭大物主櫛みか玉(ヤマトノオオモノヌシクシミカタマ)命(ヤマトノオオモノヌシクシミカタマ)(「みか」は瓩の千を镸に置き換えた字)、つまり大物主(オオモノヌシ)神は、【櫛の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述したように、海を照らしながら来る姿や、目を輝かせる蛇の姿を持ち、雷鳴を発する神であり、これは火球の描写と考えられるので流星(火球)の神と考えられる。

 

神名解釈

「倭大物櫛みか玉命」の神名中の「主(ヌシ)」は神名末尾のパターンと考えられるので、「倭大物主(ヤマトノオオモノヌシ)」と「櫛みか玉(クシミカタマ)命」の二つの神名が連結されていると考えられる。

このうち、櫛みか玉(クシミカタマ)命(クシミカタマ)を解釈すると、「クシ」は【櫛の章】で前述したように「流星」を「櫛」に見立てたもの、「ミカ」は【甕の章】で前述したように「流星」を「(みか)」に見立てたもの、「タマ」は本章冒頭で述べたように「星」を「玉」に見立てたものと考えられるので、「櫛・(みか)のような星の神」つまり「流星の神」と解釈できる。

 

幸魂奇魂の意味

また、【櫛の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述したように『日本書紀』神代上第八段一書第六において大物主(オオモノヌシ)神は海を照らしながら大己貴(オオアナムチ)神の前に出現した。その時、大己貴(オオアナムチ)神に誰かと問われた大物主(オオモノヌシ)神は「汝の幸魂奇魂なり」と答えている。

この「幸魂」「奇魂」の読みは『日本書紀』には「佐枳弥多摩(サキミタマ)」「倶斯美拖磨(クシミタマ)」と記されているが、「サキタマ」「クシタマ」と読むこともできる。そして「サキタマ」「クシタマ」であれば次のような神名に使われている例があるので、本来の読みはこちらと考えられる。

 

前玉(サキタマ)命(サキタマ)……【玉の章/前玉命】で後述。

前玉比売(サキタマヒメ)サキタマヒメ)……【玉の章/その他の神】で後述。

活玉前玉比売(イクタマサキタマヒメ)神(イクタマサキタマヒメ)……【玉の章/その他の神】で後述。

櫛玉饒速日(クシタマニギハヤヒ)命(クシタマニギハヤヒ)……【玉の章/櫛玉饒速日命】で後述。

天櫛玉(アマノクシタマ)命(アマノクシタマ)……【玉の章/天櫛玉命】で後述。

 

「サキタマ」は「()いた星=流星」と解釈できる。【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述したように「流星は(すばる)から来る」という考え方があったと思われるが、(すばる)から多くの流星が降ってきても(すばる)の星自体は無くならないことから、流星は(すばる)のごくわずかな一部を「()いた星」が降ってきたもの、と考えられていたのではないかと思われる。

「クシタマ」は「櫛のような星=流星」と解釈できる。

 

まとめ

・倭大物主櫛みか玉命(ヤマトノオオモノヌシクシミカタマ)……流星の神

【櫛の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述した流星の神。

 

関連ページ

【石の章/磐裂神】……「星を割く神」の意。