流星と昴の日本神話
石の章

磐裂神

五百箇磐石(いおついわむら)湯津石村(ゆついわむら))=(すばる)」から生まれた流星の神。星宮神社の祭神。

 

五百箇磐石(いおついわむら)湯津石村(ゆついわむら))=(すばる)」から生まれた流星の神

磐裂(イワサク)神(イワサク)は【速の章/熯速日神】で前述したように「五百箇磐石(いおついわむら)湯津石村(ゆついわむら))=(すばる)」から生まれている。

【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述したように「流星は(すばる)から来る」という考え方があったと思われるので、磐裂(イワサク)神は(すばる)から生まれた流星の神と考えられる。

 

星宮神社の祭神

磐裂(イワサク)神は多くの星宮神社で(まつ)られている。共に生まれた妻とされる根裂(ネサク)神と対で(まつ)られていることも多い。

序文で述べたように栃木県には百六十社以上の星宮神社があるが、磐裂(イワサク)神はそのうち百三十社以上で(まつ)られており、百二十社以上では根裂(ネサク)神と共に(まつ)られている。

また、磐裂(イワサク)神、根裂(ネサク)神の孫ともされる経津主(フツヌシ)神も星宮神社では磐裂(イワサク)神、根裂(ネサク)神と共に(まつ)られていることが多く、次に挙げる星宮神社三十八社では磐裂(イワサク)神、根裂(ネサク)神、経津主(フツヌシ)神が共に(まつ)られている。

 

・星宮神社(栃木県宇都宮市刈沼町(うつのみやしかりぬままち)410)

・星宮神社(栃木県宇都宮市西川田本町(うつのみやしにしかわたほんちょう)3―14―8)

・星宮神社(栃木県鹿沼市大和田町(かぬましおおわだまち)104)

・天満星宮神社(栃木県鹿沼市下粕尾(かぬまししもかすお)621)

・星宮神社(栃木県河内郡上三川町東蓼沼(かわちぐんかみのかわまちひがしたてぬま)129)

・星宮神社(栃木県さくら市狹間田(はさまだ)1500)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町飯岡(しおやぐんしおやまちいいおか)437)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町泉(しおやぐんしおやまちいずみ)359)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町上平(しおやぐんしおやまちうわたいら)160)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町大久保(しおやぐんしおやまちおおくぼ)934)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町風見山田(しおやぐんしおやまちかざみやまだ)747)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町金枝(しおやぐんしおやまちかなえだ)469)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町佐貫(しおやぐんしおやまちさぬき)255)

・星宮神社(栃木県塩谷郡塩谷町田所(しおやぐんしおやまちたどころ)1362)

・星宮神社(栃木県塩谷郡高根沢町飯室(しおやぐんたかねざわまちいいむろ)443)

・星宮神社(栃木県塩谷郡高根沢町寺渡戸(しおやぐんたかねざわまちてらわたど)283)

・星宮神社(栃木県塩谷郡高根沢町西高谷(しおやぐんたかねざわまちにしごうや)333)

・星宮神社(栃木県塩谷郡高根沢町花岡(しおやぐんたかねざわまちはなおか)1802)

・星宮神社(栃木県塩谷郡高根沢町伏久(しおやぐんたかねざわまちふすく)571―1)

・星宮神社(栃木県下野市下古山(しもつけししもこやま)1530)

・星宮神社(栃木県栃木市梅沢町(とちぎしうめざわまち)389)

・星宮神社(栃木県栃木市梅沢町(とちぎしうめざわまち)985―3)

・星宮神社(栃木県栃木市平柳町(とちぎしひらやなぎまち)1―23―26)

・星宮神社(栃木県栃木市藤岡町都賀(とちぎしふじおかまちつが)2531―6)

・星宮神社(栃木県栃木市星野町(とちぎしほしのまち)1037―2)

・星宮神社(栃木県栃木市宮町(とちぎしみやまち)802)

・星宮神社(栃木県那須烏山市落合(なすからすやましおちあい)867)

・星宮神社(栃木県日光市小倉(にっこうしこぐら)596)

・星宮神社(栃木県芳賀郡市貝町稚谷(はがぐんいちかいまちしゅうがい)710)

・星宮神社(栃木県芳賀郡市貝町多田羅(はがぐんいちかいまちたたら)621)

・星宮神社(栃木県芳賀郡市貝町文谷(はがぐんいちかいまちふみや)476)

・星宮神社(栃木県芳賀郡益子町塙(はがぐんましこまちはなわ)2355―1)

・星宮神社(栃木県芳賀郡茂木町深沢(はがぐんもてぎまちふかさわ)165)

・星宮神社(栃木県矢板市片俣(やいたしかたまた)608)

・星宮神社(栃木県矢板市倉掛(やいたしくらかけ)885―2)

・星宮神社(栃木県矢板市境林(やいたしさかいばやし)825)

・星宮神社(栃木県矢板市館ノ川(やいたしたてのかわ)323)

・星宮神社(栃木県矢板市山苗代(やいたしやまなわしろ)292)

 

各文献における名前

・『古事記』……石拆(イワサク)

・『日本書紀』……磐裂(イワサク)神、磐裂根裂(イワサクネサク)

・『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』……磐裂根裂(イワサクネサク)神、磐裂根裂(イワサクネサク)

 

神名解釈

江戸時代の国学者である本居宣長(もとおりのりなが)は『古事記伝』(一七九八年)において、イワサク、ネサクの神名はイワネサクを二つにわけて二柱に名付けたもので、イワネは『延喜式(えんぎしき)』に記載されている祝詞(のりと)で使われている「磐根(いわね)」(大きな岩)の意、サクは岩の凸凹がある上を通り行く意、と解釈した。

磐裂(イワサク)神、根裂(ネサク)神は流星の神と考えられるので、このサクの解釈は妥当とは言えないが、「磐根(いわね)」に由来するという点は妥当な解釈と考えている。

神名の磐裂(イワサク)神(イワサク)を解釈すると、「イワ」は本章冒頭で述べたように「星」を「磐」に見立てたものと考えられるので、「星を()く神」と解釈できる。つまり【玉の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述した、流星は(すばる)のごくわずかな一部を「()いた星」が降ってきたもの、という考え方に基づいた、流星を発生させる神を意味する名と考えられる。

そして妻の根裂(ネサク)神は夫に由来する神名であり、祝詞(のりと)で良く使われている「磐根(いわね)」という言葉から、磐裂(イワサク)神の対となる根裂(ネサク)神という神名が作られたと考えている。【櫛の章/補足 アシナヅチ、テナヅチの意味】で前述したアシナヅチ、テナヅチの場合と同様の神名の作られ方である。

 

まとめ

・磐裂神(イワサク)……(すばる)から生まれた流星の神

・「五百箇磐石(いおついわむら)湯津石村(ゆついわむら))=(すばる)」から生まれている。

・「流星は(すばる)から来る」ので、つまり流星の神。

・星宮神社百三十社以上で(まつ)られており、百二十社以上では根裂(ネサク)神と共に(まつ)られている。

 

関連ページ

【速の章/熯速日神】……五百箇磐石(いおついわむら)湯津石村(ゆついわむら))=(すばる)

【櫛の章/補足 アシナヅチ、テナヅチの意味】……テナヅチは夫の神名アシナヅチから作られた対となる神名。

【玉の章/倭大物主櫛みか玉命】……サキタマ=()いた星=流星。

【石の章/磐筒男神、磐筒女神】……磐裂(イワサク)神、根裂(ネサク)神の子ともされる。

【石の章/斎主神】……経津主(フツヌシ)神の別名。磐裂(イワサク)神、根裂(ネサク)神の孫ともされる。