流星と昴の日本神話
玉の章

まとめ

 

本章で示してきたように神名に「(タマ)」が付く神は、次の図のような構成となっている。流星の神や、流星に由来している可能性がある天降る神、その近親が多くを占めている(24例中18例、75%)。

このように多くの例があることから単なる偶然とは考えにくい。つまりこれら流星の神や天降る神、その近親の神名に付く「(タマ)」は、本章冒頭で述べたように「五百箇御統(いおつのみすまる)(すばる)」と同じく「星」を「玉」に見立てたものと考えられる。

 

神名に「玉」が付く神
神名に「玉」が付く神

速玉之男(ハヤタマノオ)……流星の神

【速の章/速玉之男】で前述した流星の神。

 

倭大物主櫛みか玉命(ヤマトノオオモノヌシクシミカタマ)……流星の神

【櫛の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述した流星の神。

 

天玉櫛彦命(アマノタマクシヒコ)……天降る神

玉櫛媛タマクシヒメ)……天降る神の妻

櫛八玉神(クシヤタマ)……(すばる)と流星の神の孫

櫛明玉神(クシアカルタマ)……(すばる)と流星の神

櫛玉饒速日命(クシタマニギハヤヒ)……流星の神

天櫛玉命(アマノクシタマ)……流星の神

【櫛の章】で前述した流星の神や天降る神、その妻や孫。

 

真玉著玉之邑日女命(マタマツクタマノムラヒメ)……天降る神

・天にいる神魂(カミムスヒ)命の子で、地上にいる大穴持(オオアナモチ)命の妻、つまり天降る神。

・神名は「美しい星に()く星の群れの女神」、つまりは「流星に()いて天降る(すばる)の女神」の意と考えられるので、【速の章/速秋津日命】で前述した「(すばる)と流星の神」と推定。

 

玉依姫命タマヨリヒメ)……流星の神の妻

【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述した流星の神・天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻。

 

太玉命(フトタマ)……(すばる)と流星の神

・天岩戸隠れの神話に登場するので「天岩戸=(すばる)」の神。

序文で述べた流星の神・火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊と共に天降るので同じく流星の神。

 

天神玉命(アマノカムタマ)……天降る神

【速の章/饒速日命】で前述した三十二人の防衛(ふせぎまもり)【甕の章/天御食持命】で前述した八代の天神(あまつかみ)の一柱で天降る神。

天神魂(アマノカムタマ)命は同神の異表記。その別名の三統彦命は「ミスマルヒコ」つまり「(すばる)の男神」と解釈できるので、【速の章/速秋津日命】で前述した「(すばる)と流星の神」と推定。

 

活玉命(イクタマ)……天降る神

【速の章/饒速日命】で前述した三十二人の防衛(ふせぎまもり)の一柱で天降る神。

【甕の章/天御食持命】で前述した八代の天神(あまつかみ)の一柱である生魂(イクタマ)命は同じく天降る神であるため同神の異表記。活玉(イクタマ)命を祖とする新田部(にいたべ)氏と、生魂(イクタマ)命を祖とする猪使(いつかい)氏が、共に磯城津彦(しきつひこ)の後裔とされていることからも裏付けられる。

 

伊佐布魂命(イサフタマ)……天降る神

【速の章/饒速日命】で前述した三十二人の防衛(ふせぎまもり)の一柱で天降る神。

 

前玉命(サキタマ)……天降る神

【甕の章/天御食持命】で前述した八代の天神(あまつかみ)の一柱で天降る神。

 

玉依日子タマヨリヒコ)……天降る神の子

玉依日売タマヨリヒメ)……天降る神の子、流星の神の妻

賀茂建角身(カモタケツノミ)命の子。賀茂建角身(カモタケツノミ)命は日向(ひむか)()(たけ)に天降る神。

序文で述べた流星の神・火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊も日向(ひむか)()(たけ)に天降る神。

玉依日売(タマヨリヒメ)【火の章/火雷】で後述する流星の神・火雷(ホノイカヅチ)命の妻。

 

活玉依媛(イクタマヨリヒメ)……流星の神の妻

【櫛の章/倭大物主櫛みか玉命】で前述した流星の神・大物主(オオモノヌシ)神の妻。

 

その他の神

・前玉比売(サキタマヒメ)

・活玉前玉比売神(イクタマサキタマヒメ)

・系譜以外の記述がないため流星の神であるかは不明。

・「速」「(ミカ)」「玉」がいずれも系譜上に現れており流星の神である可能性は高い。

・豊玉彦(トヨタマヒコ)

・豊玉姫(トヨタマヒメ)

・玉依姫(タマヨリヒメ)

・振魂命(フルタマ

海神(ワタツミ)の家族だが、振魂(フルタマ)命は天降る神・前玉(サキタマ)命の親。

・このため海に天降って海神(ワタツミ)となった流星の神々である可能性もある。