流星と昴の日本神話
甕の章

天御食持命

八代の天神(あまつかみ)の一柱で天降る神。御食(ミケ)(ミカ)と同義で流星の意。

 

八代の天神(あまつかみ)の一柱

天御食持(アマノミケモチ)命(アマノミケモチ)は『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』神代本紀(神代系紀)で神皇産霊(カムミムスヒ)尊の子、紀伊直(きいのあたい)らの祖とされる神である。

先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』神代本紀(神代系紀)には、一代の天神(あまつかみ)天御中主(アマノミナカヌシ)尊と可美葦牙彦舅(ウマシアシカビヒコヂ)尊、二代の天神(あまつかみ)国常立(クニノトコタチ)尊、豊国主(トヨクニヌシ)尊、天八下(アマノヤクダリ)尊、と世代別に天神(あまつかみ)の系譜が記されている。

七代以降は不明瞭な点があるが、六代の天神(あまつかみ)の次の世代として記されている神々を七代の天神(あまつかみ)、それらの子として記されている神々を八代の天神(あまつかみ)と解釈すると、八代の天神(あまつかみ)は次のようになる。

 

高皇産霊(タカミムスヒ)尊の子

天思兼(アマノオモイカネ)命、信濃国(しなののくに)に天降った阿智祝部(あちのはふりべ)らの祖

天太玉(アマノフトタマ)命、忌部首(いんべのおびと)らの祖……【玉の章/太玉命】で後述。

天忍日(アマノオシヒ)命、大伴連(おおとものむらじ)らの祖、別名は神狭日(カムサヒ)命……【櫛の章/天槵津大来目】で前述。

天神立(アマノカムタチ)命、山代久我直らの祖

 

神皇産霊(カムミムスヒ)尊の子

天御食持(アマノミケモチ)命、紀伊直(きいのあたい)らの祖……本項で述べる。

天道根(アマノミチネ)命、川瀬造(かわせのみやつこ)らの祖

天神玉(アマノカムタマ)命、葛野鴨県主(かどののかものあがたぬし)らの祖……【玉の章/天神玉命】で後述。

生魂(イクタマ)命、猪使連(いつかいのむらじ)らの祖……【玉の章/活玉命】で後述。

 

津速魂(ツハヤムスヒ)尊の子

市千魂(イチヂタマ)

 

振魂(フルタマ)尊の子

前玉(サキタマ)命、掃部連(かもりのむらじ)らの祖……【玉の章/前玉命】で後述。

天忍立(アマノオシタチ)命、纏向神主(まきむくのかんぬし)らの祖

 

万魂(ヨロズタマ)尊の子

・天剛川命(または天剛風命)、高宮神主(たかみやのかんぬし)らの祖

 

このように天御食持(アマノミケモチ)命は八代の天神(あまつかみ)の一柱である。そして『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』には八代の天神(あまつかみ)は天降る神であるとも記されており、天御食持(アマノミケモチ)命は天降る神ということになる。

天降る神であるという点から、流星に由来する神である可能性がある。

 

各文献における名前

・『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』……御食持(ミケモチ)

・『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』……天御食持(アマノミケモチ)

 

新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)和泉国(いずみのくに)神別(しんべつ) 天神 紀直(きのあたい)の条においては「神魂(カミムスヒ)命の子、御食持(ミケモチ)命の後なり」と記されており、天御食持(アマノミケモチ)命は別名、御食持(ミケモチ)命とも言うことがわかる。

 

神名解釈

神名の天御食持(アマノミケモチ)命(アマノミケモチ)を解釈すると、「ミケ」は【甕の章/櫛御気野命】で前述したように「ミカ」と同義で、本章冒頭で述べたように「流星」を「(みか)」に見立てたもの、「モチ」は神名末尾のパターンと考えられるので、「天の流星の神」と解釈できる。

別名の御食持(ミケモチ)命(ミケモチ)は「流星の神」と解釈できる。

神名に「ミケ」が付くと御食津神(みけつかみ)(食物を司る神々)と解釈されてしまうことが多いが、御食津神(みけつかみ)の神名については【甕の章/補足 御食津神の神名の意味】で後述する。

 

まとめ

・天御食持命(アマノミケモチ)……天降る神

・八代の天神(あまつかみ)の一柱で天降る神。

【甕の章/櫛御気野命】で前述したように「ミケ」は「(ミカ)」と同義で流星の意。