太玉命
別名、天太玉命。五伴緒の一柱で「昴と流星の神」。
五伴緒の一柱
太玉命（フトタマ）は忌部の遠祖、忌部首らの祖、斎部宿禰の祖などとされる神である。『古事記』において五伴緒と称される神々の一柱である。
『新撰姓氏録』右京神別上 天神 斎部宿禰の条には「高皇産霊尊の子、天太玉命の後なり」と記されている。この斎部氏の斎部広成が撰述したのが『古語拾遺』である。
太玉命は『古事記』『日本書紀』『古語拾遺』『先代旧事本紀』において天岩戸隠れの神話に登場し、玉、鏡、青和幣（麻布）・白和幣（木綿）を五百箇真坂樹の枝に掛けて捧げ持ち、祈祷などを行った神である。
また、【序文】で述べた流星の神・火瓊瓊杵尊と共に天降るので同じく流星の神と考えられる。
つまり太玉命は【速の章／補足 天岩戸、天安河の河上の意味】で前述した「天岩戸＝昴」の神であり流星の神でもある「昴と流星の神」と考えられる。
各文献における名前
・『古事記』……布刀玉命
・『日本書紀』……太玉命、忌部神、太玉者
・『古語拾遺』……天太玉命、太玉命、太玉神
・『新撰姓氏録』……天太玉命
・『先代旧事本紀』……天太玉命、天太玉神、天太玉、太玉命
神名解釈
神名の太玉命（フトタマ）を解釈すると、
・「太」は古語で「立派・壮大等の意で、神またはこれに準ずるものに関する名詞や動詞に複合して用いられる」『時代別国語大辞典 上代編』三省堂、一九六七年）。
・「玉」は本章冒頭で述べたように「星」を「玉」に見立てたもの。
これにより「立派な星の神」と解釈できる。
別名の天太玉命（アマノフトタマ）は「天の立派な星の神」と解釈できる。
前述したように太玉命は「昴と流星の神」と考えられるので、「立派な星」とは、満月より明るいこともある特大の星である火球の意と考えられる。
太玉命の子・孫
【櫛の章／櫛石窓神】で前述したように、『古語拾遺』では豊磐間戸命、櫛磐間戸命は太玉命の子で二柱の神とされており、『古事記』のように天石門別神の別名とはされていないが、天岩戸隠れの神話に登場しているので、やはり「天岩戸＝昴」の神と言える。
また『古語拾遺』には太玉命の孫である天富命も登場する。
この神名の天富命（アマノトミ）を解釈すると、「ミ」は神名末尾のパターンと考えられるので、「天の戸の神」となり、やはり「天岩戸の神」と解釈できる。
まとめ
・太玉命（フトタマ）……昴と流星の神
・天岩戸隠れの神話に登場して祈祷などを行った神。
・【序文】で述べた流星の神・火瓊瓊杵尊と共に天降るので同じく流星の神。
・つまり【速の章／補足 天岩戸、天安河の河上の意味】で前述した「天岩戸＝昴」の神であり流星の神でもある「昴と流星の神」。