流星と昴の日本神話
玉の章

玉依姫命

流星の神・天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻。

 

天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻

玉依姫(タマヨリヒメ)命(タマヨリヒメ)は『日本書紀』神代下第九段一書第七によれば、高皇産霊(タカミムスヒ)尊の子の万幡姫(ヨロズハタヒメ)の子とされている。玉依姫(タマヨリヒメ)命は天忍骨(アマノオシホネ)命(天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の別名)の妻であり、天之杵火火置瀬(アマノキホホオキセ)尊(火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊の別名)を生んでいる。

天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻については様々な異なる神話、別名があり、【火の章/火之戸幡姫】で後述する。

なお、タマヨリヒメという名の神は他にもいる。天降る神・賀茂建角身(カモタケツノミ)命の娘である玉依日売(タマヨリヒメ)については【玉の章/玉依日子、玉依日売】で、大物主(オオモノヌシ)神の妻である活玉依媛(イクタマヨリヒメ)については【玉の章/活玉依媛】で、海神(ワタツミ)豊玉彦(トヨタマヒコ)の娘である玉依姫(タマヨリヒメ)については【玉の章/その他の神】で後述する。

 

「タマヨリヒメは巫女」ではない

タマヨリヒメは「(たま)()()くヒメ」で神霊を憑依させる巫女の意と解釈されることが多い。

本章冒頭で述べたように、小島憲之・直木孝次郎・西宮一民・蔵中進・毛利正守校注/訳『新編日本古典文学全集2 日本書紀1』(小学館、一九九四年)は玉依姫命の注釈で「霊魂(タマ)が依り来る姫、の意」としている。

坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋(おおのすすむ)校注『日本古典文学大系67 日本書紀 上』(岩波書店、一九六七年)も、海神(ワタツミ)豊玉彦(トヨタマヒコ)の娘である玉依姫の注釈で「タマヨリは、タマの馮りつく人。つまり巫女」としている。

しかし高皇産霊(タカミムスヒ)尊の孫とされる玉依姫(タマヨリヒメ)命、天降る神・賀茂建角身(カモタケツノミ)命の娘である玉依日売(タマヨリヒメ)海神(ワタツミ)豊玉彦(トヨタマヒコ)の娘である玉依姫(タマヨリヒメ)を、神ではなく人であり巫女とみなす根拠を示すことができていないので、この解釈に信憑性は無い。

特に高皇産霊(タカミムスヒ)尊の孫、天忍骨(アマノオシホネ)命(天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊)の妻とされる玉依姫(タマヨリヒメ)命の場合、高皇産霊(タカミムスヒ)尊、天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊は共に天にいる神であるため、玉依姫(タマヨリヒメ)命も天にいる神であり、巫女とは考え難い。

 

神名解釈

玉依姫(タマヨリヒメ)命が本章冒頭で述べた「タマ」が付く流星の神の名を持つのは、【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述した流星の神・天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻であることに由来すると考えられる。

神名の玉依姫(タマヨリヒメ)命(タマヨリヒメ)を解釈すると、「タマ」は本章冒頭で述べたように「星」を「玉」に見立てたもの、「ヒメ」は女神の神名末尾のパターンと考えられるので、「星に()()く女神」と解釈できる。

 

まとめ

・玉依姫命(タマヨリヒメ)……流星の神の妻

【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述した流星の神・天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻。

 

関連ページ

【玉の章/玉依日子、玉依日売】……天降る神・賀茂建角身(カモタケツノミ)命の娘である玉依日売(タマヨリヒメ)

【玉の章/活玉依媛】……大物主(オオモノヌシ)神の妻である活玉依媛(イクタマヨリヒメ)

【玉の章/その他の神】……海神(ワタツミ)豊玉彦(トヨタマヒコ)の娘である玉依姫(タマヨリヒメ)

【火の章/火之戸幡姫】……天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の妻についての様々な異なる神話、別名。