流星と昴の日本神話
甕の章

櫛御気野命

素戔嗚(スサノオ)尊の別名。天降る速い星の神=流星の神。御気(ミケ)(みか)と同義で流星の意。

 

櫛御気野(クシミケノ)命(クシミケノ)は【櫛の章/櫛御気野命】で前述したように素戔嗚(スサノオ)尊の別名である。素戔嗚(スサノオ)尊は【速の章/速素戔嗚尊】で前述したように、日の神、月の神と共に生まれた星の神、高天原(たかまのはら)から追放されて天降る神であり、天降る速い星の神=流星の神と考えられる。

 

神名解釈

櫛御気野(クシミケノ)命の「御気(ミ)」は「甕(ミ)」と同義と考えられる。「カ」と「ケ」は次に示す例のように、両方とも「器、入れ物」を意味する言葉だからである。

 

・「器、入れ物」を意味する「カ」の例

・たしら(甕)……手を洗う水を入れる土製のかめ

・ひら(平瓮)……平たい土器の皿

・み(甕)……酒の醸造などに用いた大きなかめ

・ゆ(斎甕、由加)……祭事に用いられたかめ

 

・「器、入れ物」を意味する「ケ」の例

(笥)……器、入れ物、特に食器

・かはら(土器)……素焼きの器

・くし(櫛笥)……櫛や化粧道具などを入れておく箱

・を(麻笥、桶)……麻糸を入れる器

 

先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』地祇本紀においては、素戔烏(スサノオ)尊の六世の孫が豊御気主(トヨミケヌシ)命(トヨミケヌシ)、その別名が建甕依(タケミカヨリ)命(タケミカヨリ)と記されている。名前中の「御気(ミケ)」が別名では「甕(ミカ)」となっており、これも「ミケ」と「ミカ」が同義として使われている例と考えられる。

つまり神名の櫛御気野(クシミケノ)命(クシミケノ)を解釈すると、「クシ」は【櫛の章】で前述したように「流星」を「櫛」に見立てたもの、「ミケ」は「ミカ」と同義で、本章冒頭で述べたように「流星」を「(みか)」に見立てたもの、「ノ」は神名末尾のパターンと考えられるので、「流星の神」と解釈できる。

 

まとめ

・櫛御気野命(クシミケノ)……流星の神

【櫛の章/櫛御気野命】で前述したように素戔嗚(スサノオ)尊の別名。

【速の章/速素戔嗚尊】で前述した流星の神。

・「カ」「ケ」は共に「器、入れ物」の意。神名中の「ミケ」は「(みか)」と同義で流星の意。

 

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