流星と昴の日本神話
石の章

有功之神

五十猛(イタケル)神の別名。流星の神・素戔嗚(スサノオ)尊の子であり、共に天降る流星の神。

 

素戔嗚(スサノオ)尊の子

有功之神(イサオノカミ、イサオシノカミ)は素戔嗚(スサノオ)尊の子、五十猛(イタケル)神の別名である。

五十猛(イタケル)神は各地に木の種をまいた神とされており、伊太祁曽(いたきそ)神社(和歌山県和歌山市伊太祈曽(わかやましいだきそ)558)などで(まつ)られている。

伊太祁曽(いたきそ)神社は日前宮(にちぜんぐう)(和歌山県和歌山市秋月(わかやましあきづき)365)、丹生都比売(にうつひめ)神社(和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野(いとぐんかつらぎちょうかみあまの)230)と共に紀伊国一宮(きいのくにいちのみや)とされる。

『日本書紀』『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』において【速の章/速素戔嗚尊】で前述した流星の神・素戔嗚(スサノオ)尊と共に天降るので同じく流星の神と考えられる。

 

各文献における名前

・『日本書紀』……五十猛(イタケル)神、五十猛(イタケル)命、有功之神

・『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』……五十猛(イタケル)神、五十猛(イタケル)命、有功之神、大屋彦(オオヤヒコ)

 

イサの意味

「砂」は「いさご」とも読むが、この「いさご」は次のように解釈されている。

 

・『時代別国語大辞典 上代編』(三省堂、一九六七年)

砂。イサは(いし)と同源か。

・『角川古語大辞典』(角川書店、一九八二~一九九九年)

石の細かいもの。すな。「いさ」は石と同源であろう。

・『岩波古語辞典』(岩波書店、一九七四年)

≪「石子」の意≫微小な石。すな。すなご。

 

砂が石の細かいものであることから、「いさご」の「いさ」は「(いし)」と同義と考えるのが妥当と思われる。

 

神名解釈

神名の有功之神は「イサオノカミ」とも「イサオシノカミ」とも読まれる。

「イサオノカミ」を解釈すると、

 

・「イサ」は前述したように「イシ(石)」と同義で、本章冒頭で述べたように「星」を「石」に見立てたもの。

・「オ」は男神の神名末尾のパターン

 

これにより「星の男神」と解釈できる。

また「イサオシノカミ」であれば、「イサオシ」は「イサオ」に神名末尾のパターン「ウシ」を加えた「イサオシ」が【序文】で述べた上代の母音連続を避ける傾向により変化したものと考えられるので、同様に「星の男神」と解釈できる。

 

まとめ

・有功之神(イサオノカミ、イサオシノカミ)……流星の神

五十猛(イタケル)神の別名。【速の章/速素戔嗚尊】で前述した流星の神・素戔嗚(スサノオ)尊の子。

・流星の神・素戔嗚(スサノオ)尊と共に天降るので同じく流星の神。