流星と昴の日本神話
火の章

火瓊瓊杵尊の兄や子

流星の神である火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊や天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の子。

 

名前の共通点

火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊の兄や子は『古事記』『日本書紀』『古語拾遺(こごしゅうい)』『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』で違いはあるが、全員名前に「()」が付いている。

 

・『古事記』

・兄が天火明(アマノホアカリ)

・子が火照(ホデリ)命、火須勢理(ホスセリ)命、火遠理(ホオリ)命(別名、天津日高(アマツヒコ)日子穂穂手見(ヒコホホデミ)命)

 

・『日本書紀』神代下第九段本文

・子が火闌降(ホノスソリ)命、彦火火出見(ヒコホホデミ)尊、火明(ホアカリ)命(尾張連(おわりのむらじ)らの始祖(はじめのおや)

 

・『日本書紀』神代下第九段一書第二

・子が火酢芹(ホスセリ)命、火明(ホアカリ)命、彦火火出見(ヒコホホデミ)尊(別名、火折(ホオリ)尊)

 

・『日本書紀』神代下第九段一書第三

・子が火明(ホアカリ)命、火進(ホススミ)命(別名、火酢芹(ホスセリ)命)、火折彦火火出見(ホオリヒコホホデミ)

 

・『日本書紀』神代下第九段一書第五

・子が火明(ホアカリ)命、火進(ホススミ)命、火折(ホオリ)尊、彦火火出見(ヒコホホデミ)

 

・『日本書紀』神代下第九段一書第六

・兄が天火明(アマノホアカリ)命(その子の天香山(アマノカグヤマ)尾張連(おわりのむらじ)らの遠祖(とおつおや)

・子が火酢芹(ホスセリ)命、火折(ホオリ)尊(別名、彦火火出見(ヒコホホデミ)尊)

 

・『日本書紀』神代下第九段一書第七

・子が火明(ホアカリ)命、火夜織(ホヨオリ)命、彦火火出見(ヒコホホデミ)

 

・『日本書紀』神代下第九段一書第八

・兄が天照国照彦火明(アマテルクニテルヒコホアカリ)命(尾張連(おわりのむらじ)らの遠祖(とおつおや)

・子が火酢芹(ホスセリ)命(別名、火闌降(ホノスソリ)命)、彦火火出見(ヒコホホデミ)

 

・『古語拾遺(こごしゅうい)

・子と明記されていないが、彦火火出見(ヒコホホデミ)尊にあたる彦火(ヒコホ)尊のみ登場する。

 

・『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)

・兄が天照国照彦天火明櫛玉饒速日(アマテルクニテルヒコアマノホアカリクシタマニギハヤヒ)尊(天火明(アマノホアカリ)命と饒速日(ニギハヤヒ)命が同神とされている)

・子が火明(ホアカリ)命、火進(ホススミ)命(別名、火闌命、火酢芹(ホスセリ)命)、火折(ホオリ)尊、彦火火出見(ヒコホホデミ)

・または、子が火酢芹(ホスセリ)命、火折(ホオリ)尊(別名、火火出見(ホホデミ)尊)

 

神名解釈

これらの神々が本章冒頭で述べた「ホ」が付く流星の神の名を持つのは、序文前項で述べた流星の神・火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊や、【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述した流星の神・天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の子であることに由来すると考えられる。

 

火明(ホアカリ)

火明(ホアカリ)命(天火明(アマノホアカリ)命)については火明(ホアカリ)命自身が天降る神であるという神話があった可能性がある。

火明(ホアカリ)命は火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊の子とする神話と、天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の子で火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊の兄とする神話があり、火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊の兄とする神話の場合、火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊と共に天上で生まれている。

火明(ホアカリ)命の後裔とされる尾張連(おわりのむらじ)らは地上にいるので、火明(ホアカリ)命自身か、その子孫の神か、あるいはその両方が天降ったとする神話が存在したはずと考えられる。

実際『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』天神本紀においては、天照国照彦天火明櫛玉饒速日(アマテルクニテルヒコアマノホアカリクシタマニギハヤヒ)尊と、その子の天香語山(アマノカゴヤマ)命(尾張連(おわりのむらじ)らの祖)は共に天降っているが、これについては『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』では天火明(アマノホアカリ)命を天降る神である饒速日(ニギハヤヒ)命と同神とみなしているためと考えられる。

火明(ホアカリ)命には天照国照彦火明(アマテルクニテルヒコホアカリ)命という別名があるため、天照(アマテラス)大神のような日の神とみなされることが多い。

しかし天に照るのは日だけではない。『万葉集』に照る月を詠んだ歌が数多くあるように月も天に照るものであり、そして満月より明るいこともある火球もまた天に照るものと言える。

神名の天照国照彦火明(アマテルクニテルヒコホアカリ)命(アマテルクニテルヒコホアカリ)を解釈すると、「(クニ)」は古語で「(アメ)」に対する「地」の意があり、「ヒコ」は男神の神名末尾のパターン、「ホ」は本章冒頭で述べたように「星」を「()」に見立てたものと考えられるので、「天に照り地に照る男神、星の明かりの神」と解釈できる。

 

まとめ

・火瓊瓊杵尊の兄や子……流星の神の子

・全員名前に「()」が付く。

序文【火の章/火瓊瓊杵尊】で前述した流星の神・火瓊瓊杵(ホノニニギ)尊の子や、【速の章/正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊】で前述した流星の神・天忍穂耳(アマノオシホミミ)尊の子。

 

関連ページ

【速の章/饒速日命】……『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』では饒速日(ニギハヤヒ)命と天火明(アマノホアカリ)命は同神。