流星と昴の日本神話
櫛の章

鳥磐櫲樟船

武甕槌(タケミカヅチ)神と共に天降る流星の神。天磐船(あまのいわふね)と同種の神話。櫲樟(クス)(クシ)が変化したもので流星の意。

 

葦原中国(あしはらのなかつくに)の平定のため天降る神

鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)(トリノイワクスフネ)は、『古事記』においては鳥之石楠船(トリノイワクスフネ)神、別名、天鳥船(アマノトリフネ)天鳥船(アマノトリフネ)神とも言い、伊耶那岐(イザナキ)神・伊耶那美(イザナミ)神の子とされる。

 

(書き下し文)

次に、()みし神の()は、鳥之石楠船神(とりのいはくすふねのかみ)(また)の名は、天鳥船(あめのとりふね)()ふ。

(現代語訳)

伊耶那岐神・伊耶那美神が次に生んだ神の名は、鳥之石楠船神(とりのいわくすふねのかみ)。またの名は天鳥船(あめのとりふね)という。

《出典》山口佳紀・神野志隆光校注/訳『新編日本古典文学全集1 古事記』(小学館、一九九七年、四一頁)

 

また、葦原中国(あしはらのなかつくに)(地上)の平定のため建御雷(タケミカヅチ)神(武甕槌(タケミカヅチ)神)と共に天降った神とされる。

 

(書き下し文)

(しか)くして、天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を建御雷神に()へて遣しき。

(現代語訳)

そこで、天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を建御雷神にそえて葦原中国(あしはらのなかつくに)へ遣わした。

《出典》山口佳紀・神野志隆光校注/訳『新編日本古典文学全集1 古事記』(小学館、一九九七年、一〇七頁)

 

【甕の章/武甕槌神】で後述する流星の神・武甕槌(タケミカヅチ)神と共に天降るので、同様に流星となって天降る神と考えられる。

 

鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)天磐船(あまのいわふね)

『日本書紀』神代上第五段本文においては天磐櫲樟船(アマノイワクスフネ)と言い、蛭児(ヒルコ)を乗せて棄てた船とされる。

『日本書紀』神代上第五段一書第二においては鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)と言い、伊奘諾(イザナキ)尊・伊奘冉(イザナミ)尊の子であり、やはり蛭児(ヒルコ)を乗せて棄てた船とされる。

『日本書紀』神代下第九段一書第二においては、高皇産霊(タカミムスヒ)尊が大己貴(オオアナムチ)神に対して国を明け渡すよう命じた際に、代わりに大己貴(オオアナムチ)神に造ることを約束したものの一つが天鳥船(アマノトリフネ)である。

鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)鳥之石楠船(トリノイワクスフネ)神)、天磐櫲樟船(アマノイワクスフネ)天鳥船(アマノトリフネ)といった神名は、「天」や「鳥」が付くことから天を飛ぶ船を意味する名と考えられる。

また、【速の章/饒速日命】で前述した饒速日(ニギハヤヒ)命や天探女(アマノサグメ)が乗る天磐船(あまのいわふね)に類似した神名であり、神が乗る船という点でも共通している。

このため天磐船(あまのいわふね)と同様に流星(隕石)を「天降る神が()()く星」と考え、それを「天降る神が乗る磐の船」に見立てたものと考えられる。

 

各文献における名前

『古事記』……鳥之石楠船(トリノイワクスフネ)神、天鳥船(アマノトリフネ)天鳥船(アマノトリフネ)

『日本書紀』……天磐櫲樟船(アマノイワクスフネ)鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)天鳥船(アマノトリフネ)

先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』……鳥之石楠船(トリノイワクスフネ)神、天鳥船(アマノトリフネ)神、鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)天鳥船(アマノトリフネ)

 

神名解釈

神名の鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)鳥之石楠船(トリノイワクスフネ)神、トリノイワクスフネ)を解釈すると、

 

(トリ)……そのまま「鳥」の意。

(イワ)……【石の章】で後述するように「星」を「磐」に見立てたもの。

クス……「クシ」のシが【櫛の章/櫛真智命】で前述したようにウ段に変化したもので、本章冒頭で述べたように「流星」を「櫛」に見立てたもの。

(フネ)……そのまま「船」の意。

 

これにより鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)は「鳥のような星の櫛の船」と解釈できる。

別名の天磐櫲樟船(アマノイワクスフネ)は「天の星の櫛の船」、天鳥船(アマノトリフネ)は「天の鳥のような船」と解釈できる。

 

まとめ

鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)……流星の神

【甕の章/武甕槌神】で後述する流星の神・武甕槌(タケミカヅチ)神と共に天降るので、同様に流星となって天降る神。

【速の章/饒速日命】で前述した天磐船(あまのいわふね)と同様に流星(隕石)を「天降る神が()()く星」と考え、それを「天降る神が乗る磐の船」に見立てた神名。

櫲樟(クス)」は「(クシ)」がウ段に変化したもので「流星」の意。

 

関連ページ

【火の章/補足 天之羅摩船の意味】……天磐船(あまのいわふね)鳥磐櫲樟船(トリノイワクスフネ)と同種の神話。